「太った人がなりやすい」と思われがちな糖尿病には、大きく2つのタイプがみられます。
それは小児や若年者に多い、インスリン依存性の強い1型と、生活習慣と遺伝的要因によって発病してくる2型です。前者は急激に、後者は徐々に、どちらも血液中のブドウ糖(血糖)の濃度が異常に高くなってきます。
尿検査だけでは診断できない糖尿病。
糖尿病で尿に糖が漏れ出すのは、血糖値が、およそ170mg/dL以上になってから。食後でも基準値140mg/dLを大きく超えないと、尿に糖は出ないので早期診断には、血糖検査が必須です。
糖尿病でなくても尿に糖が出ること(腎性尿糖)もありますから、必ず医療機関で検査を受けましょう。
糖尿病と診断されるまでの検査。
糖尿病を診断するためには、次の3つの検査方法があります。
※ HbA1c:採血時点から過去1~2カ月間の血糖状態がわかる検査。現在は国際標準の「NGSP値」が使われています。検査結果が、以前使われていた「JDS値」で表されている場合は、0.4を足すとNGSP値に換算できます。
「境界型」の人は日常生活の見直しを。
今のままの生活を続けると、糖尿病になる危険の高い人の多くが、境界型と判定されます。これまでの食事や、運動量などを見直し、発病を防ぐ努力をしましょう。
原因はどう違う?
症状はどう違う?
1型糖尿病と2型糖尿病の違い
1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
---|---|---|
発症年齢 | 子どもや若い人に多い | 中高年に多い |
体型 | やせ型に多い | 太った人に多い |
発症のしかた | 急激に発症し、病状の悪化も急速 | ゆるやかに発病し、進行もゆっくり |
発症の原因 | 膵臓のβ細胞が破壊されたため | 遺伝的体質に肥満などの要因が加わったため |
治療方法 | インスリン注射 | 食事・運動療法。 場合によっては飲み薬とインスリン注射 |
ケトアシドーシス | 起こしやすい | まれに起こす |
ケトアシドーシスとは?
インスリンは、ブドウ糖をエネルギーとして分解するときに必要なホルモン。不足すると、ブドウ糖の代わりに脂肪がエネルギー源として使われ、ケトン体という酸性物質ができます。「ケトアシドーシス」とは、このケトン体が血中に増え、血液が酸性化した状態。体のさまざまな働きが低下し、重症になると昏睡に陥ってしまう危険な症状です。
糖尿病は一生つきあっていかなければならない病気です。しかし悲観的になることはありません。きちんと治療を続け、血糖値を良好にコントロールしていれば、仕事も続けられますし、出産することもできます。空腹時血糖値110mg/dL未満、食後2時間血糖値140mg/dL未満を目標に血糖コントロールを続けていきましょう。
糖尿病とつきあうコツは自分自身を管理すること。
糖尿病をうまくコントロールしていくために、気をつけたいのは栄養・運動・休息、そしてストレス解消の4つの要素。これは糖尿病患者さんだけでなく、すべての人にとって、健康な生活を送るうえで大切なことです。糖尿病治療の主治医は自分自身だと自覚し、規則正しい生活を心がけて、「一病息災」をめざしましょう。
きちんとした血糖コントロールが合併症を防ぎます。
血糖の高い状態が続くことにより起こる、体のさまざまな部分の障害を「合併症」と言います。将来、合併症を起こさないためには、血糖コントロールが大切です。
血糖自己測定に加え、1~2ヶ月前からの血糖値がわかるHbA1C(ヘモグロビンエー・ワン・シー)の検査を、病院で定期的に受けましょう。合併症を予防するには、このHbA1Cが6.5%以下を保つよう努力することが必要です。
糖尿病三大合併症
糖尿病網膜症 | 単純網膜症→前増殖網膜症→増殖網膜症と進行し最悪の場合は失明に至ることもあります。 |
糖尿病腎症 | 早期腎症→顕性腎症前期→顕性腎症後期→腎不全と経過。腎不全になると、人工透析が必要です。 |
糖尿病神経障害 | 下痢/便秘/しびれ/はきけ/胃もたれ/筋力低下/下肢疼痛/こむら返り/失禁/たちくらみ/など |
糖尿病によって起こる大血管症の例
脳梗塞 | 脳に動脈硬化が生じ、脳梗塞になると、めまい、顔面や半身の麻痺、意識障害などの症状がおこります。 |
心筋梗塞 | 心臓の血管の内側が狭くなり、狭心症や心筋梗塞の危険が高まります。糖尿病性神経障害のせいで、痛みを感じないこともあるので注意が必要です。 |
下肢閉塞性動脈硬化症 | 歩くとすぐに足のふくらはぎやももが痛くなり、休み休みでないと歩けなくなります。最悪の場合、足がくさって壊疽になることもあります。 |
合併症は糖尿病になったら必ず起こるわけではなく、適切な血糖コントロールで防ぐことができます。むやみに恐れることなく、正しい治療を続け、定期的な検査と診察を受けることが大切です。また食事・運動療法は毎日の暮らしに取り入れるようつとめましょう。
食事療法
食事療法の基本は一日3回、きちんと食べることです。
間食は、1型糖尿病のお子さん以外は控えましょう。食事は、量にさえ気をつければ何を食べても大丈夫ですから、患者さんだけ特別なものを用意する必要はありません。むしろ、低カロリーで品数豊富な糖尿病食は、他の家族の生活習慣病予防にも役立ちます。食品を栄養分ごとに分けた食品交換表を、毎日の献立づくりに活かしましょう。
運動療法
運動療法には、肥満解消のほか、心肺機能の向上、動脈硬化の予防、筋肉の強化などの目的があります。また運動をして血糖が下がると、体が要求するインスリンの量が減るという、インスリンの節約効果もみられます。運動といっても、あくまで治療の一環なので、急に激しいスポーツをしてはいけません。自分に適した運動の種類と量を、主治医とよく相談して決めましょう。
薬物療法
食事・運動療法で血糖コントロールできない2型糖尿病患者さんには、飲み薬を使うことがあります。副作用で血糖値が下がりすぎることがあるので、主治医に指示された用法・用量を必ず守りましょう。また1型糖尿病の患者さんと、飲み薬の効果が得られなかった2型糖尿病の患者さんは、インスリン注射を行います。インスリン注射は安全で確実な治療方法ですので、怖がらず、主治医に勧められたら速やかに取り入れましょう。